噛み合わせと脳の関係
今日のコラムは脳と噛み合わせの関係についてです。脳との関係というとだいぶ広い話になってきますが、近年、噛み合わせと脳の成長との間に密接な関係が見えてきたというお話です。
脳と顎は確かに生理的に近い位置にあります。脳、顎、歯は全て頭蓋骨という骨の中に納まっているため、少し関係があるのは何となくイメージがわきます。今回の内容としては、顎を使って食べ物を噛む、ということが直接的に脳に刺激を与えて脳の発達に影響を与えていることがわかってきたということです。そういえば一昔前、ガムを噛みながら勉強をすると頭に入りやすいというような話も聞いたことがありませんか?
ものを噛む際には、歯茎の中にある歯根と、その歯根周りの歯根膜から刺激が伝わります。歯根膜に刺激が伝わることで、脳に刺激が伝わり、脳細胞が活性化してきます。特に6歳ころまでに脳細胞というのは8~9割出来上がるといわれています。この6歳ころは永久歯に生え変わるころと大体一致します。
生理学分野でも噛み合わせと脳の発達に関しての関係性が証明されてきているという話もあります。まず臼歯が欠損(抜けるなどしてない状態)の患者さんと、フィットしていない義歯のため咀嚼がしっかりと出来ていない患者さんの前頭葉機能の数値を確認します。その後、噛み合わせ治療を受け同じように数値を調べてみたところ、それぞれの患者さんの集中力が高まったというデータが出たそうです。この調査で噛み合わせが前頭葉の機能に影響を与えていることがわかりました。
歯列矯正はもともと美容、審美の要素が強く、こういった視点の価値がなかなか伝わっていなかった現状があります。確かに、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)などで矯正治療を受けられた患者さんには見た目にも大きな変化があり、大変喜ばれます。
しかし最近ではこういった脳との関係や、精神面との関係、肩こりなどの前身のバランスとの関係など、様々な観点での矯正治療の価値がわかってきました。歯並びだけでなく、噛み合わせの重要性を考慮したトータルでの矯正治療の価値を伝え、患者さんの治療にあたっていきたいと思っております。